2019.06.26

荒金 大典

デザインは、正義の味方

学生時代に学んだ「人間工学」の講義で、今でも心に残っていることがあります。その講義は「産業革命以降、人間と製品の関係を幸せなものにするために、デザインという研究分野が生まれた」という内容でした。人間工学では「あらゆる製品は、機能や構造の都合ではなく、使う側である人間の性質に寄り添ったものであるべき」という考え方 (Man Machine Interface) が基礎になっています。

 

もし、デザインがなかったら…。世の中は、チャップリンの「モダン・タイムス」のような世界だったのかも知れません。産業革命が起こり、資本主義が生まれ、経営者や資本家の肥大化する欲望により大量のモノが作られました。その結果、もしかすると、生活者は「機能や構造がむき出しの凶暴なモノたち」に囲まれて過ごしていたかも知れません。

 

しかしまさにその時、デザインが「モノは誰のために在るのか」という命題を持って現れ、陥りかけた異様な未来から、世の中を引き戻す力になったのだと思っています。

 

デザインは、生まれながらにして、生活者のために存在しています。だから、誇り高いデザイナーの取るべきスタンスは一つ。クライアントのためではなく、生活者のためにモノを作る、ということです。パートナーであるクライアントと協力して、生活者のために役立つこと。そして、クライアントとともに世の中から正当な対価を受け取り、我々もまた生活していくこと。

 

資本は時に利己的です。そんな中でも、私たちデザイナーは生活者のために存在していることを絶対に忘れない。デザインはクライアントの道具でも魔法でもなく、社会的な役割をになった正義の味方だと思っています。

 

Modern Times

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著者: 荒金 大典

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